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琴を聴いてみる


地下室のメロディー  (市川 慎 作曲)

 「地下室のメロディー」。冒頭の繊細な入り方が天才的だと思う。

 最近、琴の演奏をYouTubeで流して、パソコンに向かうようになった。きっかけは、東京の公園で、小さな琴を演奏していた女の人。それから、邦楽部に入っている友達。二人とも、髪は黒く長く、ひとりでいることを怖がらない。だからといって他人を拒否するわけでもない。この距離感は、実は難しい。私は、気に入った人間には依存してしまう傾向にあるから、二人が少しだけ異世界の人のように思える。

 私の思考回路は、それほど複雑にはできていない。綺麗な二人の持っているものは、美しくていいものに見える。「隣の芝生は青い」原理だ。とはいえ、琴や邦楽のことは、さっぱり知らなかった。だから、何を聴けばいいのか、よくわからずに、検索して出てきた「春の海」や「賛歌」、「瀬音」を、とりあえず流していたのだが、ここで、意外と超絶技巧が要求されるらしい、ということを漠然と理解する。弦を弾く音の細かい震えが連なって、何層にも重なった重厚な音が鼓膜に届く。芳醇な音楽。

 以前、坂東玉三郎が芸術監督を務める太鼓集団「鼓動」の演奏を見たことがある。太鼓に、こんな細やかな表現が可能なのかと驚いたが、琴の重奏も、生で聴いたら、それくらいの強い印象が残るだろう。