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偽善を突かれる

 身勝手な期待をして、それが裏切られてシラけている。音楽をやっている人たちは、細々と一生懸命、売れなくても健気に頑張ってる、みたいな気持ちの悪い思い込みがあったのを、綺麗に打ち砕かれた正月だった。

 音楽を聴いて好きになった、そこまではいい。でも、CDがもう販売されていないのを聞いて「そっか、売れなかったんだ。努力だけではどうにもならないことってあるよね」と、どこか同情していたら、話はまったく違っていた。そのアーティストは、母方の実家周辺では有名な音楽家の娘で、就職もせずにフラフラしており、それを見かねた著名な母親が、CDを出させてやった、くらいのことだった。だから、娘のほうは完全に私の勝手な同情を超えて、経済的にも恵まれ、才能のあるなしに関わらず、音楽の世界で食っていけるような人物だったのであり、健気な努力家とは程遠い「あばずれ」だったらしい。むしろ、権力者を親に持たない私のほうが、彼女から哀れに思われるかもしれない。

 それは「売れない時代を経て涙ながらに成功する」という芸能系の感動ポルノに、自分がどれだけ晒されてきたか、そして、現実はそれ以上にもっと多様で、綺麗事と無縁であるか、教えてくれた貴重な出来事だ。