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できれば傷つかずに生きたい

 できれば傷つかずに生きたい。「座右の銘は」とか、「何か言いたいことはありませんか」と仮に聞かれたとしたら、迷わずそう答える。嫉妬されるのも、見下されるのも、蹴られるのも殴られるのも、避けて通れるならそうしたい。ついでに、自分の偽善や欠点を暴かれる苦しみからも、遠く離れて暮らしたい。

 このフレーズは、田口ランディの『できればムカつかずに生きたい』のパクりなんだけど、ムカつくよりも、怒りよりも、悲しいとか苦しいとかいう感情のほうが、よっぽど手に負えない。世の中には「負けず嫌い」という人種がいて、彼らはなかなかにパワフルなのだけれど、ああはなれない。敗北は悲しいし辛いし情けない。でも、「だから次は頑張るんだ!」とか思えない。「そもそも勝負しなければ、苦しまなくて済む」って、そっちに考えが行く。学校でドッチボールなんかやったときには、たいてい、さっさと当てられて、外野で傍観していた。だって、当たって痛い思いをするのは、一回で十分だ。「お友達にガンガンボールをぶつけたほうが勝ち!」の、あのゲーム、どう考えても性格悪いと思うんだけど、PTAから苦情が来たっていう話は、ついぞ聞かない。やっぱり、私の感覚は、世間とどっかずれてるんだろう。

 「熱い人生を送るんだ!傷を恐れるな!戦え!」って人は確かにいる。でも、平和な世界って、きっと傷つきたくない人たちが作るんだぜ。武器を持たずに、みんな家で寝ていたら、それはつまらないし間抜けな光景で、彼らのお気には召さないかもしれないけど、少なくとも非常に平穏で平和的だよ。だから、内向きっていうことは、何も責められるようなことじゃないと思う。闘いたい人は、そうすればいい。ただ、だからって何もしない人間よりも偉いとは限らないんだって、そう言いたい。