「無敵の人」を作らないためにできること

 「人には親切に」という幼稚園レベルの教えをいまだに心に留めているのは、私が道徳的な人間だからではない。人は攻撃されたら仕返ししようとする生き物だ、ということがわかっているから、余計な危険に身を晒したくないという思いが強いだけのことだ。裏を返せば、自分はやられたらやり返すタイプの人間だから、安易に他人を傷つけるのはリスキーだとわかっているだけ。

 冴えない奴が相手だからと言って、見下してかかるのは別にいい。でも、どこかでそいつに足を掬われることを覚悟してやったほうがいい。カースト下位に置かれた人間は、復讐心だけは人一倍持っていたりする。相手が女なら、嘘でもいいから「かわいい」か「女らしい」かは言っとけ。間違っても外見をけなすな。馬鹿げた恨みを買って出世を邪魔される。

 借りた金は必ず返せ。返してもらえないことを根に持った人間は、相手の評判を落としにかかる。周囲に相談するふりをして、自分がどんなに馬鹿にされているか言いふらす。そうすれば「金にだらしない」「育ちが悪い」「信用できない」のイメージが、金を借りた側についてまわるようになる。嘘じゃない。

 窮地にある人間を、わかりやすく見殺しにしないほうがいい。同じことが起こったとき、絶対に倍返しされるから。「あのとき助けてくれなかった」「あいつはマジで無能」とかいう話に裏でなってたりするから。

 何かやらかしたとわかったら、極力フォローに回ったほうがいい。相手の自尊心を満足させるのが最優先事項で、借りた金を単純に返すくらいではその怨恨は埋められないことを覚えておいたほうがいい。

 社会に冷たくされたと思うから、自暴自棄になってでも社会に復讐する人間が生まれる。でも、それは冷たい人々がそいつを一発ずつ殴るように、街角で教室で、ずっと足蹴にしてきたからかもしれない。失うもののない人のことを「無敵の人」と言うけれど、一人一人がその人を産み出した社会に責任を持ってることは、覚えておいてもいいと思う。