美容院に楽しく通うために

 髪はあまり触らないで、と美容師に言われた。「髪の毛は摩擦で傷んでいくから、頻繁に触る人は傷みます。肩に着くようになると、鞄やコートで擦れたりもするので」。髪も新陳代謝をするから、微量ながら櫛に汚れが付くのは当たり前、とのこと。へー。

 そういう話を聞くほうが、どうでもいい世間話よりもずっと楽しい。夏には汗をかいても皮脂が固まらないけど、冬は冷えて、汚れになって頭に溜まるから気をつけたほうがいい、とか。隣の席の女の子はアイドルの話をしていたけど、(「AKBが売れたんで、グループ売りが増えたんですよー」)美容師は髪にかけてのプロだから、私は「業界の話を聞くいい機会」くらいに思って切ってもらいに行く。ハサミにも色々と種類があって、これは70%カット用です、とか、パーマは5年前よりずっと進化しているから、以前ほど傷むことはありません、とかいう解説を、相槌を打ちつつ聴く。自分の髪が、そんな形で社会とつながっていることが面白い。美容院向けにハサミを売る人やパーマ液の進化と、自分の外見は、無縁じゃないらしい。

 トレンドに興味が持てない、という人は、どんなカットが日本人の骨格にはフィットしていて、どんなシャンプーなら髪が傷まないか、そういうところから美容院に注文をつけるのもアリだと思う。「どんな髪型がいい?」と訊かれても、私はいつも答えられなかったから、それ以外の方法で美容師とコミュニケーションを取ろうと頑張った。その結果「手入れが楽」「カットのみで」「どこかしらに曲線を入れて」くらいのことは言えるようになったから、まあ、いいかな、と思っている。