表現者に、幸福なんてありえない

 表現者の幸せって難しい。満たされないものがあるから表現行為に走るのだ。人生が十分に満ち足りているのに創作しようって人は、まず見たことがない。みんながみんな闘っている。自分自身の淋しさだとか社会だとか、過去の苦しい思い出だとか、自分を傷つけた他人に対して。いつもふわふわ笑っていられたら幸せかもしれないけど、何かを生み出そうとするパワーは、そこからは生まれないのだ、きっと。表現って、どんなに高尚に見えても根本は血みどろなんだろう。だから、創作している一瞬、「幸福だ」と感じることはあっても、おとぎ話の最後に出てくる一文のような「安定した」幸せとは無縁なのだ、何かを創って生きる以上。確か宮崎駿監督も、楽しいのは企画を練っている時だけで、あとは地獄、とどこかのインタビューで答えていたと思う。そういう意味では、確かな幸福を手にしている表現者なんて、どこにもいない。才能に恵まれるとか、創作環境に恵まれるとかが「幸福」として定義されるとしても、本当の表現者としての幸せって、そこでは終わらないはずだ。

 だから芸術家は、幸せとは程遠い人たちなのかもしれない。みな貪欲で、足るを知らない。安住を嫌う表現者だけが、いつも真の芸術家と呼ばれる。怖い世界だなあ。