世紀末文学に好みが集中

 『フランス文学は役に立つ!』の中で、「世紀末文学」に分類されている『ベラミ』『にんじん』『子ども』がどれも興味深い。自分の読書傾向がなんとなくわかった。世紀末とは19世紀末のことらしい。この頃のフランスは、政局は不安定で、1889年にはブーランジェ事件(クーデター失敗事件)、1897年にはドレフュス事件。『ベラミ』は1885年の著作で『にんじん』が1894年だから、世界史に残る出来事も、当時は生々しい身近な話題だったことになる。

 少し時代を遡れば、スタンダールの『赤と黒』、ユゴーの『レ・ミゼラブル』の大作が見られるけれど、これらの作品は「疾風怒濤」感がある。高い野心と壮大な語り口で、みみっちさは少しも感じられない。それに比べて『ベラミ』は、世俗的に成り上がれたらそれで満足、『にんじん』が描くのは陰湿な家庭の日常。アングルが狭くなっている気はする。でも今の自分には、そのほうがよっぽど身近で、だから読んでしまうんだと思う。『子ども』のように、階級移動を切望するあまり、息子に辛くあたるお母さんなんて、今の日本でも十分見られる話だ。

 世界史に特別詳しくはないから、今の日本と19世紀末のヨーロッパが似ている、なんて話はできない。ただ、自由恋愛に関しては進んでいるフランス社会に、日本も似てきているのかもしれない、とは思う。