価値観の更新の価値

 自分が知らなかった世界の凄さに打ちのめされる経験は、若い頃に経験しておいた方がいいのだと思う。自分のいる場所が世界一だと信じて老いていって、現実を見るのをやめるようになるよりは。

 中学を卒業したとき、もう勉強することなんてないと思っていた。義務教育を終えたら立派な大人なんだから、これ以上どうして高校で机に向かうのか、理解できなかった。金が欲しいだけなら、何も学歴がなくたって生きていくことはできる。現実世界で生活していくために要るのは、経済の実践能力だけだ。だとしたら、学費を払って大学まで行くなんて、どう考えても無駄だ、って。あのとき就職していたら「金稼ぐ以上に大事なことってある?」みたいな大人になっていただろう。狭い世界の中で「あなたは恵まれているのよ」と言われ続けて、いいようにこき使われて疲労死した可能性もある。

 何か新しいことをやるののいいところは、今までの自分を相対的に見られるところだと思う。世界には、知らなかった欠点も美点も両方あって、そこで初めて自分のいるところを振り返れる。そういえば「古事記」や「日本書紀」って日本オリジナルの話ではまったくなく、世界中に似たような話(特に東、東南アジア)にあるんだと聞いたときは「え…」と思った。それを根拠に日本を神国とか言ってた人たち、要は学がなかったんと違うか。現実が、自分の望むものに反していても直視できるかどうか、そういう能力を「知性」と呼ぶらしいと近頃思う。