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あれ以来マスコミを信用しない

 マスコミの仕事は、事実を伝えることではない。自分たちの都合のいいように物事を切り取って、あたかも事実のように喋るのが仕事である。

 母が昔、フラワーアレンジメントの教室に通っていたことがある。うちには似あわないような、エレガントなお教室と内容だった。祖父は、庶民派の母に対して嫌味を込めた意味で「セレブみてぇだなあ、ん?(苦笑)」と言っていた。

 ある日、それを地元のミニコミ誌が取材に来た。母はインタビューに答えて「おじいさんにはそう言われるんですよー」と笑ったらしいが、記事はこうなっていた。

――今年、中学生になる娘さんには「お母さんがセレブになる日だね♡」と言われるという。――

 「父」が「娘」に置き換えられ、台詞には♡まで付いて、すっかり好意的なニュアンスである。言ってないんだけど、私、こんなこと。娘とは私である。記者となんの接触もしていない。言ってもいないことを勝手に書かれた不気味さと不愉快は、しばらく尾を引いた。

 もうひとつ、実名を出すのもなんだけど、佐藤初女さんのお話を聞いたときのこと。マスコミによれば「手作りのおにぎりで、人々を救う聖女」みたいに取り上げられていたけれど、話をするために講演の場に立った彼女は、当たり前ながら普通のおばあさんだった。人前で喋るスキルもなく、質疑応答では、自分の意見に固執して、相手を受け入れる姿勢を見せなかった。繰り返すけど普通のおばあさんだ。確かに人を救ったかもしれないけど、人前に引っ張り出して祭り上げる価値のある人ではない。少なくとも私はそう思った。

 大事なのは、自分にとっての価値だけ。新聞とか雑誌とか、不特定多数の人々に向けられたものを信じるべきじゃないなと思った。信じる前に、見てみなきゃ。