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バレンタインこぼれ話

 財布に46円しかなくて「お腹が減った」と電話中の母に言ったら、「ブラックサンダーなら買える」と励まされたことがある。一個30円。「ひと目で義理とわかる」がコピーのこのお菓子、値段の割においしい。

 イケメンだからチョコをもらうわけではない、というのがバレンタインのおもしろいところで、三枚目キャラの人たちが結構もらっていたりするんだよね。あげる側として見ていて気になるのは、どんな男の人でも「ハッピーバレンタイン」と言って渡すと、それが例えただのガム一枚であっても喜んでくれるところ。やっぱり、お菓子そのものよりも、その好意が嬉しいんだよね。逆に、女の子同士で一人だけ友チョコを貰えないときはヘコんだ。別にお菓子を食べたいわけじゃない。自分だけ好かれていないと思えたから悲しかった。

 大人になって楽になったのは、そういう教室の狭くて湿った人間関係から逃れられたところだ。大人になれば、社会的な力も子どもの時よりは強いし、お金を稼いで自分で物事を決めていける。だから、幼い頃はよかった、なんてことは全く思わない。

 毎年この日になると、放課後いつまでも教室から帰ろうとしない男の子っていたけれど、あれって貰えるの待ってたんだろうなあ。「なんでさっさと帰んないの?」と言ったことがあるけれど、今ならその事情もわかる。そういう時は、さらっと帰れるほうが、たぶんかっこいい。