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タマラ・ド・レンピッカの生涯が切ない

 タマラ・ド・レンピッカの絵は、強くて金属的な感じがする。コントラストがはっきりしていなければならず、曖昧なもの、優しいもの、柔らかいものが気に食わない人なのだ。権力者や金持ちにしか興味を示さなかったと聞いても、別に驚かない。そんなことは、絵から十分伝わってくる。

 20世紀前半、ペトログラードはレーニンの支配下で、秘密警察チェカに脅えていた。レンピッカの夫も逮捕されて、彼女は彼を解放しようと大金を払い、あらゆる犠牲を払った。切ないのはここからだ。夫は戻ってきたけれど、逮捕のショックに加えて、彼女が払った金額を知り、すっかり力をなくしてしまう。貧しいホテル暮らしを抜け出すために、彼女は絵の学校に通い、成功して社交界デビューを果たす。がしかし、いい暮らしをするようになったにも関わらず、夫とは離婚することになる。成功のために家族を犠牲にしたと非難されて、だ。

 最終的には、時代遅れの画家となり、抽象画に手を出すも売れず、娘を困らせながら余生を終えたらしい。こういうのを見ていると、自立し過ぎるのも問題だなあと思う。夫の境遇を、社交界での成功を、何もかも自分で動かそうとして、一度は世間も付き合ってくれたかもしれないけど、長くは続かなかった。レンピッカの生き方を「強い女性!素晴らしい!」と称賛する人は変わり者だ。彼女が幸福だったのかどうか、で言えば、かなりの部分「否」だと思う。

レンピッカ(タマラ・ド・レンピッカ) 激動の時代を自由に生きた美しい女性の人生と作品 | BIRD YARD