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公衆電話のこと

 近所の公衆電話ボックスがいくつか撤去されるらしく、ボックスのガラスにその旨を書いた張り紙が貼ってあった。母も祖父母も、結構な頻度で公衆電話を使っているから、そういう人たちにとっては不便になるなーと思う。おばあちゃんが入院して、病院と家で連絡を取る時や、スーパーにいる母が「何か買ってくものない?」と聞くときにずいぶん世話になった。私も手許に10円玉さえあれば、携帯を使わずに電話ボックスに入ることもあるから、つまらない思いで見ている。

 電話をかけるだけじゃなく、電話ボックスは他のことにも使う。ちょっと荷物を置いてカバンの中身を整理したいときとか、携帯での電話を聞かれたくないときとか、あるいは街の音が電話相手に聞こえないようにボックスに入ったり。電話自体ではもう儲からないかもしれないけど、町中にあるあのスペースは、ほかの使い道を考えて、撤去はしないでほしい。スマホの充電ができる場所にするとかさ。

 あの、半個室みたいな雰囲気は悪くない。電話ボックスそのものがレトロな作りになっているものは、マニアなファンが写真を撮って、写真集を出していてもおかしくないくらい味わいがある。自分が気に入っているのは、ヨーロッパの古い街角にありそうな茶色っぽい作りになっていて、さびれた金属板にアルファベットで「TELEPHONE」と書かれていたもの。そこから誰かに電話をかけたら、映画のワンシーンになりそうだった。できれば雨の夜がいい、何か不穏な事態が起こっている雰囲気が醸し出せる。

 もちろん時代はスマートフォンだけど、そのうちレトロブームがきたら、公衆電話だって愛玩の対象になっていくだろう。