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ひろみちお兄さん!

 NHKおかあさんといっしょ」の体操の人で言えば、ひろみちお兄さん世代です。と言っても、彼は12年も体操のお兄さんをやっていたから、それが意味する幅がすごく広い。この「おにいさん」の本名が佐藤弘道だと知ったのは、教育番組を見なくなってから、ずっと後のことだった。

 なんとなく、弘道お兄さんの立ち位置って「ノッポさん」みたいだ。ずっと、あの格好で、いつもの番組に出てるっていう安心感というか。記憶の中の「おかあさんといっしょ」では「みんな一緒にあ・い・う、え・おー!」って歌が流れてるけど、今でも使われてるのかな、あの曲。思い出っていうのは時が止まった状態で再生される。だから私の中で、弘道お兄さんは永遠におじさんにならない気がする。周りをぐるぐる回る子どもたちに向かって呼びかけている、あのイメージ。ノッポさんは、今や結構なおじさんみたいだけど。

 「お兄さん」を辞めたあと、佐藤弘道さんは『子どもはぜんぜん、悪くない』という著書で「スタジオに来る子どもたちに、お母さんにくっついて離れない子が増えてきた」「子どもは、親が見守ってくれるという安心感があるから、冒険しに行ける」みたいなことを書いていた。親子の信頼関係が薄れているんじゃないか、体は動かすものなのに、そのやり方を知らない子が増えたんじゃないか……体操のお兄さんをやる裏で、そういうことを考えていたんだなーと、ちょっと新鮮だった。にこやかに歌って走っている印象しかなかった人だから。表面しか見てなかったなあ、と思う。世界の表層の裏に、ちゃんと考えている人がいたんだ、という軽いショックだった。

 そういう経験を積み重ねて、人は大人になるんだろう。