「夜に一人」と聴きたいラジオ

 壊れていると思って放置していたラジオが動いた。AMとFMの切り替えだけができなくなっているので、ずっとAMで英語を話す人が洋楽を流すのをひたすら聞いている。NHK放送では、昼には民謡を放送していたり、国会中継が聞けたり、テレビよりもトーンダウンしていて落ち着くので、これから聞くことが増えるかもしれない。

 それにしてもラジオを聴いている層というのは、どんな人たちなんだろう。中学校の時は誰もが「スクール・オブ・ロック」を聴いていた気がするけど、彼らの家に、機械としてのラジオがあったってことなのか。それともネット経由で聴けたのか。未だに疑問だ。覚えているのは、近くの定食屋の女将さんが「グローバルなのが好きなの」と言って、J-WAVEをずっと流していたこと。そうして、バイリンガルのパーソナリティが次々現れて喋るのを「私、来世はヨーロッパあたりに生まれて、2、3か国語使いこなせる人間になりたいの」と言って聴いていた。アフリカに生まれてもできそうなのに、と思った。あの大陸にだって、いろんな部族がいるから。でも女将さんの目に映るのは、あくまでヨーロッパなのだ。

 ラジオは、別に聞きたい番組なんかなくても、無音が耐え難いときに流しておくのにぴったりだ。そう考えると「多感な思春期」の真っ只中にいた中学の同級生たちは皆、無音の夜が嫌だったんだろうな、と思う。そういえば、子どもを寝かせる時には子守唄を歌う。一人で孤独に過ごし、眠りに入るっていうのは、誰にとっても心細いことなのかもしれない。原始時代まで遡れば、いつ襲われるかわからない状況で眠るのは怖いわけで、夜は仲間と一緒に過ごすものだったとしたら。夜に一人っていうのは、かなり特異な現象なのかもしれない。