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『本を読む人』を読書中

 

 仕事では「いてくれてありがとう」と言われるし、プライベートにも特に問題はないのに、なんか満たされない。そんな気持ちで新潮クレストブックスの『本を読む人』を読書中。ジプシーの家族と、そこに本を読みに来るユダヤ人女性との物語、フランスのロングセラーだそうだ。ジプシーのおばあさんの名前はアンジェリーヌ。夫に先立たれて、子どもと孫と共に、空き地に置いたキャンプカーで暮らしている。

 

楽しい思いをするには、誰のこともあてにできるものじゃない。ましてや亭主なんかとんでもない。人は孤独なもんで、たとえ、お互い愛情に不足がなくたって、自分の寂しさだけは自分でなんとかするしかないんだよってね。

 その通りだよな。憂鬱なときって、誰かが助けに来てくれるだろうって思うのさ。でもその誰かだって、なんにもできないんだよな。

 

 台詞だけ抜き出しても、この場面のよさはうまく伝わらないだろうけど、言っていることは正鵠を射ている。自分をどうしたらいいかわからなくなって、誰かに託したりすがったりしたくなるけど、それで寂しさが消えたりなんてしないんだよな。他人じゃ埋められない溝が、誰の中にもあるんだと思う。どれだけ褒められても愛されても、それで幸せかって聞かれると、何か足りない気がする。そんな感覚。誰かに何かを与える立場になろうと思っても、そのポストも既に埋まっていて、もう世界に自分の居場所なんてないんじゃないかって思う。どこに行っても「間に合ってます」と断られるような。

 そういう情緒、感情を拾い上げるから、文学には価値があるのだ。まだ読破していないけれど、こういう作品は、きっと終わり方も美しいんじゃないかって期待しながら読み進める。