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「シンプル」はいいけれど

 「ていねいな暮らし」「おとなのシンプル」みたいなキャッチフレーズが、白地を背景に書かれている雑誌とか本とか。最初のうちはよかったけど、最近では氾濫し過ぎて、見た途端シラけるようになった。「おひとりさま」「一人の時間を優雅に過ごす」みたいなのも、その仲間だ。一人で有意義な時間を過ごす、それはいい。一生独身でいるのも、その人の判断だから構わない。でもそれを美化するのはおかしい。やりたければ黙々とすればいいことを、わざわざ美しいものに祭り上げるのは、何かそこに後ろめたさや違和感があるからだ。

 シンプルは美しい。それはわかる。しかし、それを提唱する人たちのやっていることは、要は「シンプル系の店で物を買う」「自然素材の物で身を固める」「それを美化する人を支持する」ことであって、質素な生活そのものを愛しているようには見えない。私の知る限り、本当に質素な人は、まずそういうもの――ミニマリストの本とか無添加を謳う化粧品とか――に手を出さない。ある人は自分から木を切り出して家具を作り、ある家では三世代に渡って同じ服を着て、水だけで髪を洗っている。でも、それでは経済が回らないから彼らは歓迎されないだけで。

 「おひとりさま(独身主義、もしくは人間関係いりません派)」も、それが本人の判断ならいい。けど、ずっと一人ぼっちっていうのは、山奥で修行でもするのでない限り辛いだろう。今は一人でいいかもしれない。それで老後はどうするの?狭い家にたった一人で住むの?断捨離した人間関係が戻って来ないまま、ぽつんと独り身でいるのが本当に理想なの?と思う。人間関係にしろ、物にしろ、やたら簡素化が推奨されているけど、人に言われてやるくらいならやめときなよって言いたい。一人が寂しいと少しでも思うなら、強がり言っていないで他人に歩み寄ることを覚えたほうがいい。