歴史がわかると見え方が違う~映画~

 『カサブランカ』は、YouTubeに全編和訳付きでアップされているくらいの(?)知名度の高い作品なわけですが。あれを子どもの頃に見ても、良さがよくわからなかっただろう。あれ、要は第二次世界大戦時のドイツをすごくこきおろしているんだよね。途中でアップになる、建物に書かれた「自由、平等、博愛」が意味するのはフランス共和国のスローガンだし(ここは日本語で字幕を出してほしい。仏語がわからない人にとってはただのアルファベットの羅列だ)、ドイツ軍人が歌っているところをフランス国歌を歌って皆で邪魔したり、「ヴィシー水」と書かれた水のボトルを捨てたり(当時のドイツはペタン内閣が権力を握っている。その本拠地がヴィシー)、わからなかったらスルーしてしまうよ、あれ。二十歳超えてから見て正解だった。

 本当は、小さい頃に見ていたかもしれない。うっすら映像に既視感がある。子どもの頃は圧倒的にミュージカルが好きだった(特に『雨に唄えば』)。理由は単純に楽しいから。男女の複雑な恋愛模様、政治情勢に翻弄される人々という『カサブランカ』の内容は、たとえ観ていても子どもには受け止め切れなかったろう。大人になってからでも、歴史を知らなかったら、ただの人間ドラマと思ったかもしれない。

 「すぐれた作品には社会性がある」と教わったことがある。その当時の政治、文化の流れがにじみ出ているというのが、傑作と呼ばれる作品群の共通点なのだそうだ。逆に言えば、それがないものは仮に流行ったところで歴史には残らないと。そうだろうな。だって後世から見たら、そのほうが議論の余地がある。自分から踏み出さないとわからないことを用意してくれるのが、名作なのだ、きっと。