湯川秀樹『創造的人間』

 角川ソフィア新刊、湯川秀樹の『創造的人間』を買って読んでる。本屋で最前列に出していたけど、新刊だからなのか、それとも書店員さんのおすすめなのか、真相は不明だが残り一冊だった。きゃーラスイチ買っちゃった。

 物理学者のこの人は、しかし大変文章もうまい。美辞麗句を弄したりせず、文章の展開が滑らかで、本当に頭がいいんだなあ(ノーベル賞取るくらいだから当然なんだけど)と思ってしまった。「明確な論理」って文理を問わず大事なことだから、どこかの分野で成功している人は、誰でもある程度クリアーな文章が書けるものだけど、それにしても平易な言葉で、一般人を見下すニュアンスもなく、ここまで書けたら聖人レベルだよ。物理はさっぱりだけど、この方が別格なのはわかる。

 たとえば、この本の最初に収められた「第二の自然」は、「私は冬が好きである」と始まる。ふんふん、と思って読んでいると「冬が過ごしやすくなったのは、科学文明のおかげである(意訳)」と来る。次に「その代わりに自然と人間の間には隔たりができた」。ここまでで、起承転結の「転」までが綺麗に達成されていて、新聞の優れた社説でも読んでる気分になる。

 短いエッセイなので、残りはネタバレになるから省くが(値段は1000円+税です。よかったら読んでみてください)頭のいい人=クリアに物事が語れる人、っていう公式が成り立つことが、湯川秀樹によって私の中で証明されつつある。数学者の岡潔も美しく簡潔な文章を書く。書き手にとって必要なのは、時には文章力よりも数学的思考なのね。