思い出に時空はない

 中学校の頃の嫌な記憶がいまだに蘇るというのに、もうあれから10年以上も経っているなんて信じられない。人の中身は時空を行ったり来たりするもので、誰しも子どもにかえったり、今に戻ってきたりして、精神なんてきっと、もともと不安定なものなのだと思う。

 小さい頃、なんでも器用にこなせる自分が憎かった。できない子は手取り足取り教えてもらえ、かわいがられるのに対して、私は「あの子は大丈夫」で済まされるばかりでなく、本来は大人がやるべき「できない子」の世話まで押し付けられた。そういう傾向は、結局中学まで続いた。頑張っているのに優秀なのに、思うように周囲に大事にされず、それどころか、報酬のない仕事だけが増えた。

 あのまま大きくなっていたら、今頃は過労死で死んでいるかもしれない。年上の女性たちが「なんでフワフワ~してるだけの女がチヤホヤされんのよ!あたしのほうが仕事できるのに!」と歯噛みしている気持ちもよくわかる。でも、私は成長が早かった分、そんな失敗は学生時代に終わっている。自己啓発とスピリチュアルにハマって、その無能さを思い知ったのも中学の頃だ。なんだったんだ、あの三年間。

 今でも許せないことはあるけれど、それがなければ今の平穏さもなかったかもしれない。そう思うと「仕方ないか」としぶしぶ受け入れる気になる。あの頃の悪人は、今も裁かれずに生きている。