私的な神木隆之介論

 実を言うと、今まで演技がうまいと思った人と言えば、木村多江と緒方拳だけです。歌舞伎の世界まで入れるなら坂東玉三郎も素晴らしいけど、それで全部。だから神木隆之介が「神木くん演技うまい!」と絶賛されているのを、ちょっと仲間はずれにされた気分で眺めている。若手の場合、周りが経験浅くて下手だから、相対的によく見えるってことはあると思う。

 食わず嫌いもよくないので調べてみたら、なんとこの人、演技だけでなくダンスもできるんですね。芸能事務所アミューズが主催する「ハンサムフェスティバル」で、しっかり踊っているので驚き。そして「自分に視線が集まってる」ということを前提として舞台に立っている感じが、その他の一般人気分が抜けきれない(注目されることでとりあえず満足してそうな)人々と一線を画している、そんな感じ。

 個人的には「画面には映っているけど台詞がないときの言葉なき演技」は群を抜いてうまい人だと思っている。台詞回しは特別すごいとは感じないけれど、オーラでなり切っちゃうタイプの俳優なんだなと。そして「注目されているのは当たり前、勝負はそれから」という大前提が、子役の頃から天才と呼ばれた人の自信を感じさせる。

 これは伝わる人にしか伝わらないけど、山岸涼子アラベスク』に出てくるラーラ、彼女の持っている自信のことだ。主人公に向かって言い放つ「天才は、九分の汗と一分の才能?ねえ、その一分があなたにある?私にはあるわ」は、何回見ても迫力のあるシーン。少女漫画のことは嫌いでも『アラベスク』は読んでみてほしい。