通りすがりの罵倒屋さん

 日傘を差して歩いていたら「雨降ってるかしらあ~?降ってないわよねえ~、バカな女ぁ~」と叫ばれたことが、近頃、記憶に新しい。こういう類の人は実際にいて、前には「雨降ってないんだけどね~、雨、降ってないんだけどねえ~~」という若い男の声が執拗に聞こえてきたことがあった。もちろん無視した。なんか、日傘ですって説明しても無駄っぽいし。

 こういうときは、こう考えることにしている。「私と話せること自体が素晴らしい体験なのだから、通りすがりのお前にそこまでしてやる必要はない」と。通りすがりの不審者に、タダで自分を提供したりなんかしない。女と話したいならキャバクラに行け。おしゃべりがしたきゃカネ払え。

 自分に自慢できるものがあるとしたら、そのひとつは「声」だ。ちょっと変わった人(アブナイ人ではない)に「君は声が綺麗だから、罵倒されたところでご褒美だよ(だから遠慮せずに話しかけてきてね)」と言われたこともあるし、何か前に立って発言する機会があれば、内容に関するコメントより先に「美声」と褒められる。その私に、無料で相手してもらおうなんていい根性だ。私と話せるのは、私が許した人だけよ。

 レベルの低い相手に悩まされている人は、それくらいのメンタルが必要だと思う。価値のある人間と話せるなんて貴重な体験なのだから、安売りしなくていい、もっと思い上がっていい。